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えむえむず

楽しく生きてるやつの日記みたいなもんです。

にわのりんご  

まさきの寝物語そのに

***

少女は庭にりんごの木のある家に住んでいた。

りんごは白い花を咲かせて少女を楽しませたし、その後は大きな甘酸っぱい果実をたわわに実らせた。

ある日りんごがこう言った。
「私の花は美しいのでしょうか」

少女はにっこり笑って頷いた。
「もちろん!あなたは美しいわ」
りんごは嬉しくなって、一等綺麗な花をたくさんつけた。

たくさんの花をつけた庭のりんごを見た母が、少女にたずねた。「いったいどうやって、そんなに花を咲かさせたんだい」

少女は、
「りんごに美しいと伝えたのよ」
と母に教えた。

しめしめと思った母は、庭のりんごにこう言った。
「あなた、甘いりんごをたくさんお付けなさいな、でないと切り倒してしまうからね」

その言葉にりんごは怯えて
「いつものりんごではいけませんか」と聞いた。

「あなた向上心はないのかしら、いつものよりもっとずっと甘くなさい。あなたできるでしょう、頑張りなさい」
母親はりんごにそう言い付け、帰ってしまった。

さて困ったりんごは、どうしたら甘くなれるのか考えた。そして水を控えれば、その分実が濃くなるのではと考えて、水を飲まなくなった。

しかしそのうちひどい日照りがやってきて、水を蓄えていなかったりんごはほとんど枯れて、すっかり花を落としてしまった。

「あなたの実、毎年とてもおいしかったのにね」

少女がそういったのを、りんごはただただぼんやりと聞いていたのだった。

おしまい
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category: Bedtime story

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