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えむえむず

楽しく生きてるやつの日記みたいなもんです。

ねこのおまつり  

まさきのしてくれる寝物語をわすれないうちに書き留めておく。その1

***

むかし、旅のねこが大きな湖のある町を通りがかったとき、あんまりにそこの人が憂鬱な顔をしているもんだから、ねこは人に声をかけた。
「なあお前さんたち、どうしたんだい、そんなにくらい顔をして」
町の人たちはとんと困り果てた様子でねこに説明した。
「もうひと月も雨があがらないのだ。今は止んでいるが、すこしの間だけだ。すこし止んだと思ったら、またすぐに降る」
町の人のはなしを聞いて、ねこは嫌そうな顔をした。
「それは困った。おれは雨がきらいだ」
ねこが空を見上げると、ちょうど、どんよりと分厚い雲からしとしとと雨が降りだした。ねこはみんな雨がきらいなので、困ってしまった。
「こんなときだ、よければ私たちと一緒に来るといい」
ねこの様子を見た町の人は、立寄った旅人がつらい思いをするのを心苦しくおもって、ねこを家に招きいれ、ミルクとあたたかい寝床を用意してやった。

その夜町の人は、みんなで集まって、いよいよ困ったと話をしていた。
「みずうみの水が増えてしまって、もうじきに家の床までみずびたしだ」
「どうにか雨を止ませられないものか」
すると話を聞いていたねこが、
「一宿一飯の恩のかわりに、おれがどうにかしてみせよう」
と言った。町の人たちはそれを聞いて驚いたが、自分たちにできることもないので、ねこを頼ることにした。

次の日、ねこは雨の止んだころあいを見はからって町に出て、町中のねこに声をかけた。
ねこたちはかさの増えたみずうみのふちまでやってきて、手を洗い出した。
町の人たちはそれを見て、一体なにをしているのかねこに聞いた。
「ねこが顔を洗ったら雨が降るとか、手を洗ったら雨が止むとか言うだろう」
ねこたちはみんな手を洗い終えると、今度はくるくるとその場で回り出した。
町の人たちはそれを見て、一体なにをしているのかねこに聞いた。
「ねこがしっぽを噛んでまわったら晴れるって言うだろう」
それからねこたちは列になると、前のねこのしっぽをくわえて湖の周りを歩き出した。
「おおきくやったら、効果は絶大さ」
たくさんのねこが前のねこのしっぽをくわえながらどんどんと歩いていった。
すると分厚かった雲が次第に薄くなっていき、ねこたちがみずうみを一周して帰ってくるころには、空はすっかり晴れていた。

町の人たちは大層ねこに感謝して、たくさんの豪華な料理をふるまって、一週間もねこたちと踊りあかしたという。
それでいまでもみずうみの人たちは、7月の雨が上がるころにお祭りをして、ねこに感謝をしているそうだ。

おしまい。

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